2020年11月6・7日岐阜県美濃市森林文化アカデミーBAT3Bセミナー
BAT-3B スパイククライミングによるチェンソー断幹作業の基本 2日間
SPUR (SPIKE) CLIMBING AND TREE REMOVAL/CHAINSAW
風倒木や雪折木、狭小地の庭木などで、やむなく伐採しなければならない場合、作業者の安全と作業の安全のため、スパイククライミングによるチェンソー断幹作業をします。そうした基本技術を学ぶ本講座、受講者はBAT-3Aを受講後の方で、なおかつチェンソー特別教育修了者しか参加できません。
今回、初めてのBAT-3B開催は、愛知県瀬戸市のアーボリスト・トレーニング研究所(ATI)から宇治田トレーナー、近藤トレーナーをお迎えして開催しました。
最初に参加者のギアインスペクションをする中で、スパイククライミングでは、スパイクの先が命であることを宇治田さんが説明。
この部分の研ぎ方が重要で、サイドを研ぐのはダメ、「研ぐべきポイントはココです。」と指をさして説明されました。
今回はノコギリやチェンソーを利用すること、作業者の安全を確保するため、ワイヤーコアランヤードを利用します。この時、グラブというランヤード調節ギアが付いていますが、単に微調整を考えるとグラブよりも6コイル・プルージックの方が便利。しかしANSI規格(American National Standards Institute)では、6コイル・プルージックは認められていません。でもレスキュー重視ならば、6コイル・プルージックの方がいいよね。
スパイクとワイヤーコアランヤードを操作する手順では、片足ずつスパイクを動かして、両足が同じ高さに揃ってから、ワイヤーコアランヤードをフリップします。
クライミングする時の、ランヤードやメインロープの位置は、上から順に、①ワイヤーコアランヤード、②メインロープ、③ランヤード の順にします。この順序にはどんな意味があるのかも、しっかり学びます。
ワイヤーコアランヤードは必ず、腰より上の位置の幹に掛ける。
下の写真では、一番手前右に近藤さん、左奥の樹上に参加者、写真中央左寄りの奥に宇治田さんが写っています。トレーナーの宇治田さんの樹上さばきは、安全で素早く、無駄がない。流石です。
樹木を上から断幹してくる場合、リギング・ブロックのためのセッティングはどうするのか?
幹に掛ける順は上から、①ワイヤーコアランヤード、②メインロープ、③リギングロープ、④ランヤード の順とします。
受け口の作り方は①コモン・ノッチ、②フンボルト・ノッチ、③オープンフェイス・ノッチ があります。
ちなみにフンボルト・ノッチ(Humboldt notch)は日本語で「逆さ受け口」とも呼ばれますが、これはアメリカ西海岸では大径木で利用されます。この受け口の利点は、①大径木では受け口の破片が大き過ぎて取り除き難いため、フンボルトなら受け口から落ちやすい。②コモン・ノッチに比較して長めに木材が取れる。③伐倒木が倒れる過程で地面に落ちるため勢いを一度殺せ、結果として幹の破損を防げる可能性が高い。
チェンソーを利用する時、ワイヤーコアランヤードの掛け方がポイント。チェンソーの鋸断ラインと平行にしないといけません。
夜の座学では安全のための基本事項の確認、宇治田さんんが作業してきた実践事例などを見ながら、様々なテクニックを学びました。夜7時まで予定された講座を修了して、ようやく夕食にありついたのです。
BAT-3Bの2日目です。
今日は台風と雪の被害を受けて、幹の上部が折れていたヒノキを断幹します。
梅岡さんがリギングロープを設置し、チェンソーで受け口と追い口を切った後に、手鋸で最終のツル調整をしています。この後に、両手で押して落とします。
篠田さんはリギングロープ設定後、少し広めの受け口をつくり、ちょうど追い口をチェンソーで切っているところです。この後に手鋸で、最終的な追い口を入れますが、ツルが効いたいい状態で作業を終えられました。
篠田さんが断幹した端材を押して落とした瞬間です。方向も良く、下のロワリングデバイス操作は錦織さんですが、うまく操作すれば地上にスッ~と下ろせます。
サダさんが断幹しているヒノキは、梢から3mほどのところにフジヅルが巻いており、そこから台風の影響でポッキリ折れていたものです。キバチやスギノアカネトラカミキリなどの加害にも遭遇していて、木材としての価値もありませんが、断幹したものはmorinosの薪に利用させてもらいます。
勇ちゃんのヒノキ断幹は手鋸がカーブソーであったため、少し手惑いましたが、なんとか処理。カーブソーは少ない力で効率よく鋸断できますが、受け口や追い口となると、直線的に切りづらく、あまり適しません。
さて、2日目最後の座学です。ここでは昨日からの実習の下での疑問を精査し、今後につなげるための「ふりかえり」です。
フンボルト・ノッチはどんな利点があるのが、樹上でのポジショニングはどうすべきか。受け口の会合線はどう合わせるのか。
スピードライン設置時のソフトシャックルはどうするのかなどなど、最終のまとめをしました。
さて、2日間にわたるBAT-3B、安全に楽しく学べたことと思いますが、肝心なことは各自が地元に帰ってから、今回の2日間を振り返り、安全で、美しい仕事を実現することです。そうしたことを願いつつ記念撮影しました。
さてさて、明日はTARS-1の開催です。明日も参加されますから、もうひと踏ん張りです。
以上報告、JIRIこと川尻秀樹でした。